幼い日の海辺の情景。それは無垢で眩しい記憶です。
潮騒、白い砂浜、大きな綿雲、かき氷、すいか割り、父母の微笑み‥‥今もあざやかに蘇ります。
そして、時を忘れて拾いあつめた桜貝。
貝殻!広い浜辺のここかしこに転がっている素朴で小さな貝に、人はなぜ魅了されるのでしょう。きれいな貝殻を見つけたときの喜び。飾ったり鑑賞して憩う楽しみ‥‥。
無邪気で幼かった頃、私も貝殻を集める楽しさを知りました。鮮やかな模様や玉虫色に光る貝を見つけては「宝石みたい」と自慢していたそうです。
ある時、祖母がちいさな貝殻を拾って「これが桜貝よ」と教えてくれました。淡いピンクをまとった可憐な貝殻。初めて見た愛らしい貝に、わたしは夢中になりました。浜辺を走りまわって拾い集めては小箱に詰め、並べて眺めて触って、うっとりしたものです。
あれから数十年。大半は、欠けて割れて、粉々に壊れてしまいました。原形を留めている桜貝は、ほんの僅かです。残念です‥‥大切に仕舞ってたのに。時間って残酷で無情‥‥。
でも不思議なことに、たとえ粉々になっても、色は褪せないのです。小箱に眠っていた小さな貝殻は、今でも淡いピンクに染まっています。形は壊れても色は消えない‥‥それは思い出と重なります。
日常の記憶はいつの間にか断片化して、やがて欠け落ちてしまいます。でも、大切ないくつかの場面は、鮮やかに思い起こされます。あの日、一緒に貝を拾ってくれた祖母の笑顔や母の声は、昨日のことのように鮮明に覚えています。その瞬間の風景は決して忘れないのに、それがどこの海辺なのか、なぜ祖母がいたのか、前後の記憶は途絶えてしまいました。
でも、それでいいんですね。桜貝の薄紅色のように、大切な一瞬の場面さえ永遠に褪せずにいてくれれば、それでいいんです。
これからも、小箱の中の桜貝が、そして心の中の思い出が、いつまでも鮮やかでありますように!
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たぶん一番乗りですね?。
幼きころより優しけり
心根の方こそ想い人
かのこころにぞ残されし
泡立つ海の贈り物
たましい一つと化しにしも
かの日をともにわれもまた
すべしと思う切なさに
遠きにあるを憂いつつ
拙き思いを書きて送らん
夏子さん
美しい詩歌をありがとうございます。
幼い頃、わたしは優しいというより内気で臆病な子どもでした。何かを失わないように、人を傷つけないように、ビクビクしていたのかもしれません。でもそれが幸いしたのか、「思い出」が長持ちしています(^o^)
臆病な心が熟成して、本当の優しさが生まれて、そして愛しい人の為に成れば、ありがたいです(^^;)
返歌です。
夕波に
届けと祈らむ
彼の地まで
切なき人に
幸贈らんと